寒いねと 話しかければ 寒いねと
答える人のいる あたたかさ
今月のことばは、俵 万智さん（１962～）です。
寒い日が続きます。思わず「寒い」とつぶやいてしまいます。
そんな時、「冬は寒いのが当然」「寒さに負けずに頑張れ」という言葉より
「寒いね」と言われた方が、安心いたします。
「寒いね」に「寒いね」で、寒さが増幅され、より一層寒さを感じるのではなく、
うなずき共感してくれる人が傍にいることで、あたたかい気持ちになれます。
私が中学２年の時に兄が亡くなり、中学３年の時に母が亡くなりました。
母が亡くなった時、弔問に来られた方々に「しっかりね」と言われ、
涙を見せるのは格好悪いと、必死で涙をこらえていました。
そんな時、親戚の伯母さんが「お母さんが亡くなって辛いね、悲しいね」と
涙を流しながら声をかけてくれました。
その言葉に、こらえていた涙が一気に溢れ、泣きじゃくったことを、今でも鮮明に憶えています。
辛い、悲しい時に「しっかり」よりは、「辛いね、悲しいね」の方が心に響きます。
仏さまのお慈悲は「同体の慈悲」といわれています。
慈悲の「悲」について、「悲」は「羽が左右に反対に開いたさま、
胸が裂けるようなせつない感じのこと」と辞典にあります。
「寒いね」に「寒さに負けず頑張れ」というのは、体も心も別の人の言葉です。
「寒いね」に「寒いね」、「悲しい」時には、共に「悲しいね」が、心に響きます。
自分を受け止め、認めてくれる、「人・教え・言葉」に、生きる力が恵まれます。
（令和3年1月の掲示板）
